道しるべ#4「逆風をプラスに転じるための言葉“風竹引天楽”」

2026.07.20 


このコラムでは、元電機連合 書記長、元東芝労働組合 中央執行委員長、東芝グループ連合初代会長として、長年にわたり労働組合の現場と向き合ってきた泉田和洋が、自身の経験をもとに、今の組合役員や組合員と一緒に考えていきたいことを綴ります。


 私が大切にしている「1本の扇子」にまつわる話を、「逆風をプラスに転じるための言葉“風竹引天楽”」と題して紹介させていただきます。

その扇子は2001年の11月に、京都清水寺の貫主、森清範(もり・せいはん)さんに、私との2002年の新春対談をお願いした際、記念品として頂戴したものです。私が東芝労働組合の中央執行委員長の時のことでした。

頂戴した扇子には、白地に竹の幹が左の方にしなり、枝葉も同じ方向にたなびいている様子が墨で描かれています。上には「風竹引天楽」の文字。書道家でもある貫主さん自らの筆によるものです。

風竹引天楽

『風竹引天楽』の扇子

「風竹引天楽(ふうちくいんてんらく)=風竹天楽を引く」。扇子に記されていたこの言葉は私にとって初めてのものでしたので、その意味を貫主さんに尋ねたところ、次のようなお話をいただきました。

「竹の幹をしならせ、枝葉をたなびかせている風は、順風・逆風に限らず天から楽しいこと・良いことを引いてきて(運んできて)くれます。ですから、逆風といえどもを自分にとって都合の悪いものと受け取ってはいけません。逆風をプラスに転じる行動を起こせば、次のステージでは必ずや楽しいこと・良いことが感じられる状況を創り出すことができます。逆風は、まさに、自己変革、自己強化を行う天の恵みであると受け止めて行動を起こすことが大事なのです」

貫主さんに対談をお願いした2001年の時期は、電機産業に携わる多くの企業が、2000年から2001年にかけて引き起こされたITバブルショックの影響を受け、2001年度(2002年3月期)の業績は大幅な赤字を見込まざるを得ない状況にあり、それぞれの企業労使がその逆境からの脱却と業績の回復・改善に向けた取り組みを必死に進めている最中でした。

私たちの企業も例外ではなかったことから、この対談は、「現下の逆境から脱却し、業績の回復・改善を果たすための労使の心合わせと元気」につながるものにしたいとの強い思いを込めたものでしたので、対談の中でいただいた「風竹引天楽」という言葉は、私(たち)をとくに勇気づけてくれるものになりました。

私たち労働組合は、この言葉を経営側、そして組合員・従業員の皆さんとともに「逆境を乗り越えるための心の支え・心構え」とし、時を選ばず労使協議を重ね、経営提言を繰り返しながら、業績改善に向けた施策に取り組みました。

その結果、組合員・従業員の皆さんの協力・努力のもと、2002年度(2003年3月期)には黒字浮上を、翌2003年度には大幅な黒字への転換を図ることができました。他の企業においても同様に業績の改善が図られていったように思います。

この逆境を乗り越えた後に立ってみると、「風竹引天楽」という言葉の意味がじわじわと身に染みてくるようでした。私は、その後も、仕事の面、生活の面でいろいろな逆風(問題や困難)にぶつかりましたが、この言葉を「心の支え・心構え」として都度、解決を図ってきた気がいたします。

誰しも、逆風には遭いたくないと思いますが、長い時間軸の中では、中身は違っても、誰もが逆風にさらされることがあるのではないでしょうか。その状況の中で前向きな気持ちに切り替えるということはそう簡単なことでないと思いますが、沈んでばかりもいられません。その時には、是非、この「風竹引天楽」という言葉とその意味を「心の支え・心構え」の一つとして、逆風をプラスに転じる行動を起こし、楽しさや良いことが感じられる次のステージを創り上げていっていだきたいと思います。

(この扇子は、また、大切にしまっておこうと思います)

この記事を書いた人

泉田 和洋

Kazuhiro Izumida


j.union株式会社 顧問
元電機連合 書記長
元東芝労働組合 中央執行委員長
東芝グループ連合 初代会長
元株式会社コンポーズ・ユニ代表取締役社長

泉田 和洋